プレコンセプションケアってなに?
「いつかは妊娠・出産するかもしれない」「まだ具体的な予定はないけれど、自分の体は大切にしたい」——。
プレコンセプションケアは、そんな“今”の自分を大切にしながら、“いつかの未来”の妊娠・出産や赤ちゃんの健康まで見据えて行うケアのことです。
妊娠が決まってからあわてて体を整えるのではなく、もっと手前の「妊娠前のライフステージ」から、自分の心と体の状態を見つめ直し、生活習慣や環境を整えていく考え方です。
「プレコンセプション」の意味
プレ(pre)=前
コンセプション(conception)=受胎・妊娠
直訳すると「妊娠前」という意味になりますが、実際には「妊娠を意識し始めるもっと前」からを含めた、広い期間をイメージして使われています。
- 今はパートナーもいない
- まだ妊娠は考えていない
- もしかしたら子どもを持たない選択をするかもしれない
こうした状況の人にとっても、プレコンセプションケアは「自分の体と人生を大切にするためのヘルスケア」として役立つ考え方です。
なぜプレコンセプションケアが大切なの?
プレコンセプションケアが注目されている背景には、次のような理由があります。
1. 妊娠は「今までの積み重ね」の上にやってくるから
妊娠・出産の経過や赤ちゃんの健康は、妊娠が分かったその日から突然決まるわけではありません。
それまでの生活習慣(食事・睡眠・運動・喫煙・飲酒など)や、持病のコントロール、ワクチン接種歴など、**「妊娠前の状態」**が大きく影響します。
2. 妊娠が分かったときには、すでに大事な時期が始まっている
赤ちゃんの重要な臓器は、妊娠に気づく前からつくられ始めています。
たとえば葉酸の摂取は、妊娠に気づいてからではなく、「妊娠の少し前〜初期」に足りていることが大切だとされています。
だからこそ、「妊娠する可能性があるライフステージ」に入った段階から、自分の体を整えておくことが重要なのです。
3. 「妊娠のため」だけじゃない、今の自分のためのケアになる
プレコンセプションケアで整えていくのは、生活習慣やメンタル、性の健康など、どれも「将来」だけでなく「今」の自分をラクに、心地よくしてくれるものばかりです。
- 生理痛やPMSがつらい
- 仕事や家事でとにかく疲れやすい
- 肌荒れや体調不良をくり返している
こうした悩みも、プレコンセプションケアの視点で見直していくことで、少しずつ改善のきっかけを見つけることができます。
プレコンセプションケアで大切にしたい主なポイント
ここからは、プレコンセプションケアの中でも特に大切な視点を、いくつかのテーマに分けてご紹介します。
1. 生理とホルモンバランスを知る
まずは「自分の生理を知る」ことからスタートです。
- 生理周期は何日くらいか
- 出血量や期間に変化はないか
- 生理痛・PMSが日常生活に支障をきたしていないか
生理は“毎月のお知らせ”であり、将来の妊娠力(妊よう性)やホルモンバランスを知るヒントでもあります。
基礎体温や生理アプリを活用して、少しずつ「自分のリズム」を把握していくことは、プレコンセプションケアの第一歩と言えます。
2. 生活習慣を整える(食事・睡眠・運動)
妊娠前の生活習慣を整えることは、将来の妊娠・出産だけでなく、今の自分のコンディションにも直結します。
- バランスの良い食事(鉄・カルシウム・たんぱく質・ビタミン類など)
- 質の良い睡眠(寝る前のスマホ時間を見直す、生活リズムを整えるなど)
- 適度な運動(散歩やストレッチ、軽い筋トレなど、続けられるもの)
完璧を目指す必要はありません。
「平日は夜ごはんに野菜を一品足してみる」「寝る前30分はスマホを閉じる」など、小さな工夫でも十分な一歩になります。
3. 妊娠に影響する可能性のある習慣を見直す
- 喫煙(自身の喫煙・受動喫煙を含む)
- 過度な飲酒
- 過度なダイエットや体重の増えすぎ・減りすぎ
これらは、将来の妊娠・出産や赤ちゃんの健康に影響する可能性があるとされています。
「やめなきゃ」と急に追いつめるのではなく、サポートしてくれる医療者や周囲の人の力も借りながら、“減らす・距離を取る”ところから始めるのも立派なプレコンセプションケアです。
4. 持病・服用中のお薬のチェック
- 糖尿病・高血圧・甲状腺の病気などの慢性疾患がある
- 毎日飲んでいる薬がある
- 市販薬やサプリメントをいろいろ飲んでいる
こうした場合は、妊娠を意識するライフステージに入ったタイミングで、一度主治医や薬剤師に相談しておくと安心です。
「将来妊娠を希望する可能性がある」と伝えることで、薬の選び方や治療方針が変わることもあります。
5. ワクチンや感染症のチェック
妊娠前に確認しておきたいものとして、風疹、麻しん、B型肝炎、性感染症などがあります。
特に、風疹の免疫があるかどうかは、妊娠前に確認しておきたいポイントの一つです。
自治体の検査や予防接種の制度を利用できる場合もあるので、住んでいる地域の情報をチェックしてみると良いでしょう。
6. メンタルヘルスとストレスケア
プレコンセプションケアは、「心のケア」も大切な要素です。
- 仕事や家庭のストレスが強い
- 眠れない、気分が落ち込む日が続く
- パートナーや家族と、将来について話すと不安が強くなる
こうした状態が続くと、心だけでなく体にも影響が出てきます。
一人で抱え込まず、信頼できる人や専門家(医師・カウンセラーなど)に相談するのも、立派なプレコンセプションケアです。
プレコンセプションケアは「女性だけ」のもの?
プレコンセプションケアというと、女性だけのケアのように思われがちですが、本来は**パートナーも含めた「男女双方のケア」**という考え方です。
- 男性側の生活習慣(喫煙・飲酒・食事・睡眠など)
- 感染症や持病のコントロール
- 将来の子どもをどうしたいか、人生設計のすり合わせ など
パートナーがいる場合は、「二人で一緒に取り組むもの」として考えると、より心強く、現実的なケアになります。
いますぐ始められる、プレコンセプションケアの小さな一歩
難しく考える必要はありません。今日からできる一歩を、いくつか挙げてみます。
- 生理周期や体調の変化を、アプリや手帳に軽くメモしてみる
- 夜更かしの日を「週〇日まで」に決めてみる
- 一日一回、深呼吸の時間をつくる
- 気になっている不調(生理痛・おりもの・乾燥など)について、婦人科や相談窓口に行ってみる
- 「いつかの自分の人生・家族をどうしたいか」を、ひとりで、あるいはパートナーと話してみる
プレコンセプションケアは、「こうしなければいけない」という義務ではなく、
“未来の自分と、かもしれない家族のために、今できることを少しずつ整えていく姿勢”そのものです。
まとめ:プレコンセプションケアは、未来のための“自分を大切にする習慣”
プレコンセプションケアは、妊娠を強制する考え方ではなく、
「妊娠する・しない」「いつ・誰と」という選択肢を含めて、
自分の人生を主体的に選ぶための“土台づくり”といえます。
- 生理や体の変化を知ること
- 生活習慣を整えること
- 持病や薬、ワクチンの状況を確認すること
- 心の状態に目を向けること
- 必要なときに、医療や専門家の力を借りること
どれも、特別なことではありませんが、続けていくことで「今の自分」も「未来の自分」もラクにしてくれる大切なケアです。
「プレコンセプションケアってなに?」と気になった今のタイミングこそ、
小さな一歩を始めるのにぴったりの時期かもしれません。
