思春期のカラダとココロについて
「最近イライラしやすい」「急に泣きたくなる」「自分のカラダが前と違う」
――そんな変化を感じている子どもや、その様子をそばで見ている大人の方へ。
思春期のゆらぎは、「性格の問題」でも「気の持ちよう」でもなく、
ホルモンの変化と脳・カラダの成長が大きく関わっています。
このブログでは、Instagramでお届けした内容をもとに、
思春期のホルモンとカラダ・ココロの変化を、もう少し詳しく解説します。
「その変化、あなたのせいじゃない」
それを知ることが、思春期を少しラクに過ごす第一歩です。
1. 思春期ってどんな時期?
思春期は、子どものカラダが「大人のカラダ」に近づいていく移行期です。
- おおよその目安
- 女の子:8〜13歳頃にスタートし、数年かけて変化が続くことが多い
- 男の子:9〜14歳頃にスタートすることが多い
- カラダだけでなく、脳や心、人間関係のあり方も大きく変わる時期です。
思春期に同時進行で起きていること
- 身長がぐんと伸びる、体つきが変わる
- 乳房のふくらみ・体毛・ニキビ・汗のにおいなどの変化
- 脳の発達が進み、「自分ってどんな人間だろう」と考える力が強くなる
- 友だち関係・恋愛・性への興味が芽生え、「自分と他人」を意識しやすくなる
こうした変化の裏側で、ホルモンが大きく動いていると思ってください。
2. 思春期に活躍するホルモンたち
思春期は、脳からの指令で卵巣や精巣が本格的に働き始め、
エストロゲン・プロゲステロン・テストステロンなどのホルモンが一気に増えます。
ここでは、特にInstagram投稿でも取り上げた「女の子に関係が深いホルモン」を中心に紹介します。
2-1. エストロゲン(卵胞ホルモン)
**「育てるホルモン」**とも言える存在です。
主な働き
- 乳房の発育、丸みのある体つき(腰やお尻のふくらみ)
- 子宮内膜を厚くして、妊娠に備える
- 骨・血管・肌・脳の健康にも関わる
思春期での役割
- 乳房のふくらみのスタート(思春期の最初のサインになりやすい)
- おりものの増加や初経(はじめての月経)への準備
エストロゲンは10代で急激に増え、その後20〜30代でピークを迎え、40代以降に少しずつ減っていくとされています。
Instagramで掲載した「エストロゲンの年齢別グラフ」は、この変化を視覚的に示したものです。
2-2. プロゲステロン(黄体ホルモン)
**「ととのえるホルモン」**とも呼べる存在です。
主な働き
- 排卵後に分泌され、子宮内膜を妊娠しやすい状態に整える
- 基礎体温を少しだけ上げる(高温期)
- 脳に作用し、眠気・だるさ・感情の変化に影響することも
思春期での役割
- 排卵が安定してくると本格的に増加し、
**月経周期のリズムや、月経前の気分のゆらぎ(PMS)**の一因にもなります。
2-3. テストステロン(男性ホルモン)
女の子にも少量分泌されますが、特に男の子で重要なホルモンです。
主な働き
- 筋肉量の増加、声変わり、体毛の増加
- 性欲や、挑戦・リスクをとる行動とも関連すると考えられています

3. カラダに起こる主な変化(女の子を中心に)
ここからは、特に「エストロゲン」「プロゲステロン」の影響が大きい
女の子のカラダの変化を整理します。
3-1. よくあるカラダの変化
- 身長が急に伸びる「成長スパート」
- 乳房のふくらみ(左右非対称もよくあること)
- 腰回りやお尻に丸みが出て、体つきが大人っぽくなる
- わき毛や陰毛などの体毛が増える
- 汗や体臭が強くなり、ニキビができやすくなる
- おりものが増え、その後、初経(最初の月経)が来る
これらは**すべて「からだが大人になる準備をしているサイン」**です。
3-2. 進み方には「個人差」が大きい
- 同じ学年でも、すでに月経がある子もいれば、まだ体つきが子どもっぽい子もいます。
- 始まる時期・進み方にはかなりの個人差があり、「友だちと違う=おかしい」ではありません。
ただし、
- 8歳前から急に胸がふくらむ、体毛が増える
- 15歳になっても月経が1度も来ない
といった場合は、一度小児科・産婦人科などに相談してみると安心です。

4. ココロに起こる変化とホルモンの関係
思春期の特徴としてよく挙げられるのが、「気持ちのジェットコースター」のような状態です。
- イライラしやすい
- ささいなことで落ち込む、涙が出る
- 自分のことが急に嫌いになる
- 恥ずかしさ・自意識が強くなる
- 性への興味や恋愛感情が芽生える一方で、不安や罪悪感を覚える など
これらは、
- エストロゲン・プロゲステロン・テストステロンなどの
ホルモンが急激に増えたり、波を打ちながら変動すること - 脳自体が「大人仕様」に作り替えられている途中であること
- 学校生活・友人関係・SNSなどの環境ストレス
が合わさって起きていると考えられています。
つまり、「気分がゆれる自分」は、
ホルモンと成長の影響を受けている**“とても自然な状態”**でもあるのです。
5. 「わたし」本人へのメッセージ:ラクになるためのヒント
ここからは、思春期を迎えている本人向けのヒントです。
(お子さんと一緒に読んでもOKです)
5-1. 「ホルモンのせいかも」と言葉にしてみる
- イライラしたり、急に泣きたくなったとき
→ 「今、ホルモンも手伝ってこうなってるのかも」と一度心の中で言ってみる。 - 「全部自分の性格のせい」と思い込まないことが大切です。
5-2. 生活リズムをととのえる
ホルモンの波に、生活リズムの乱れが重なると、気分の揺れが強く出やすくなります。
- できるだけ同じ時間に寝て起きる
- 朝ごはんを抜かない
- 軽い運動(ストレッチ・散歩・部活など)で体を動かす
- スマホやSNSは、寝る前1時間はお休みしてみる
5-3. 生理周期を「ゆるく」記録してみる
- カレンダーやアプリで、「月経が来た日」「しんどかった日」だけでもメモ。
- 「毎月この時期に落ち込みやすいかも」と分かると、
「これはホルモンの波だ」と気づいて、少し客観的に見られるようになります。
5-4. 信頼できる大人・医療者に話してみる
- 保護者、学校の先生、養護教諭、保健室の先生、かかりつけ医など、
「この人なら大丈夫かな」と思える人に、
一言だけでも「最近しんどい」と伝えてみてください。 - 言葉にするだけで、楽になることもたくさんあります。
6. 大人・保護者へのメッセージ:「知っているだけ」で守れること
思春期の子どもを見守る大人にとって、
「ホルモンの変化」を知っていること自体が、すでに大きなサポートになります。
6-1. よくあるNGになりやすい声かけ
- 「思春期なんてそんなもの」
- 「そのうち落ち着くから気にしないで」
- 「考えすぎ」「わがままじゃないの?」
悪気がなくても、こうした言葉は
**「わたしのしんどさを分かってもらえない」**というメッセージとして伝わってしまうことがあります。
6-2. 子どもを守る声かけの工夫
- まずは事実を受け止める
- 「最近つらそうに見えるけど、大丈夫?」
- 「イライラしやすいって言ってたよね」
- そのうえで、原因を一緒に考えるスタンス
- 「ホルモンの影響もある時期だからね。どうしたら少し楽になりそうかな?」
- 「一緒に情報を調べてみようか」
- 性や月経の話を、「タブー」ではなく
“話していいテーマ”として日常の会話に少しずつ混ぜる- 「最近保健の授業でどんなこと習った?」
- 「もし体のことで心配なことがあったら、いつでも話してね」
6-3. 「知らないこと」は一緒に調べればいい
すべてを完璧に答えられる必要はありません。
- 「それは知らなかった。じゃあ一緒に調べてみようか」
- 「専門の先生にも聞いてみようか」
と、大人も「学ぶ姿勢」を見せることで、
**子どもにとって安心できる“相談の窓口”**になれます。
7. 受診を考えた方がいいサイン
思春期のゆらぎは自然なものですが、
医療につなげた方が安心なケースもあります。
カラダのサイン
- 8歳前から乳房の発育や体毛の増加など「思春期の変化」が始まっている
- 15歳になっても月経が一度も始まらない
- 月経痛があまりにも強く、学校生活に支障が出ている
- 出血量が非常に多い、貧血が疑われる など
ココロのサイン
- 気分の落ち込みがほとんど毎日続いている(2週間以上)
- 起きられない・学校に行けない日が増えている
- 強い不安・パニックが続いている
- 自分を傷つけたい気持ち、死にたい気持ちを口にする/行動にうつす
こうしたサインがあるときは、
「思春期だから仕方ない」で片づけず、できるだけ早めに受診を検討してください。
相談先の例:
- 小児科・思春期外来
- 産婦人科・婦人科
- 心療内科・児童精神科
- 学校のスクールカウンセラー・養護教諭 など
8. おわりに:「話してよかった」と思える夏に
思春期は、
**カラダもココロも「大人に近づくための大工事」**が行われている時期です。
- イライラも、涙も、モヤモヤも
→ 多くが**ホルモンと成長の影響を受けた「自然なゆらぎ」**です。 - 大人がホルモンと成長の仕組みを「知っている」だけで、
→ 子どもの不安を減らし、「話してもいいんだ」という安心感につながります。
📘 思春期は、自分のカラダが変わっていく第一歩。
不安も戸惑いも、全部“自然なこと”。
👨👩👧👦 大人も子どもも、一緒に学ぶことから始めましょう。
このブログが、
「思春期のカラダとココロ」について
親子で対話を始める小さなきっかけになればうれしいです。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、
個々の症状に対する診断・治療を行うものではありません。
気になる症状がある場合は、必ず医師・専門医療機関にご相談ください。
