更年期とは? 年齢・ホルモン・症状の基礎知識
はじめに:更年期は「不調の時期」だけじゃない
「最近、なんだか前と違う」「ホットフラッシュってよく聞くけれど、自分も更年期?」
40代〜50代になると、体や心の変化に戸惑う方が増えてきます。
更年期は、誰にでも訪れる“からだの大きな節目”です。
怖がるものでも、恥ずかしいものでもなく、「仕組み」を知っておくことで、不調への不安をぐっと減らすことができます。
この記事では、
- 更年期っていつからいつまで?
- ホルモンはどう変化するの?
- どんな症状が出やすいの?
といった基礎知識を、やさしく整理していきます。
1. 更年期とは?「閉経の前後10年くらい」の変化の時期
1-1. 「閉経」を中心とした前後の10年間
医学的に「更年期」と呼ばれるのは、
卵巣の働きが徐々に低下し、月経が終わりに向かっていく時期
のことです。
一般的には、
- 閉経の前後5年ずつ、合計約10年間を指すことが多いです。
「閉経」とは、
最後の月経を境にして、その後12か月(月経が1年まったく来ない状態)が続いた時点で、振り返って「閉経した」と判断されます。
1-2. 更年期の年齢の目安
個人差は大きいですが、日本人女性の平均的な閉経年齢は約50歳前後と言われています。
そのため、
- おおよそ45〜55歳くらいが「更年期」と重なることが多い目安のゾーンです。
ただし、
- 40代前半で閉経が近づく方もいれば、
- 50代後半まで月経が続く方もいます。
年齢だけで「まだ早い/もう遅い」と決めつけず、自分の体の変化を見ていくことが大切です。
1-3. 更年期は「病気」ではなく「ライフステージ」
更年期は、思春期・性成熟期・老年期とならぶ、女性のライフステージのひとつです。
「更年期だから必ずつらい不調が出る」というわけではなく、
- 軽い不調ですむ方
- ほとんど症状がない方
- 日常生活に支障が出るほどつらくなる方
など、感じ方は本当にさまざまです。
2. ホルモンはどう変わる?エストロゲン低下が大きなポイント
更年期を理解するうえで、欠かせないのが女性ホルモンの変化です。
2-1. 女性ホルモンの主役「エストロゲン」と「プロゲステロン」
月経や妊娠に関わる主な女性ホルモンは、
- エストロゲン(卵胞ホルモン)
- プロゲステロン(黄体ホルモン)
の2つです。
エストロゲンは、
- 月経周期を整える
- 骨を丈夫に保つ
- 自律神経や感情の安定を助ける
- 血管や皮膚、粘膜の状態を守る
など、からだ全体に幅広く関わっています。
2-2. 更年期に起こるホルモンの乱高下
40代半ば頃から、卵巣の機能が少しずつ低下し始めると、
- エストロゲンの分泌量が安定しなくなる → 上がったり下がったり、乱高下する
- 閉経が近づくと、徐々にエストロゲンが低下し、少ない状態で安定していく
という流れをたどります。
この「エストロゲンの急な増減」が、自律神経にも影響し、
ほてり・のぼせ・イライラなどの更年期症状を引き起こすと考えられています。
2-3. 脳からの指令とのバランスが崩れる
ホルモンの分泌は、
- 卵巣だけでなく、
- 脳の「視床下部」「下垂体」との連携
によってコントロールされています。
卵巣の働きが弱くなってエストロゲンが減ってくると、脳は「もっと出して!」と指令を出し続けます。
しかし、卵巣は十分に応えられず、脳と卵巣の間でバランスが崩れやすくなるのが更年期です。
このバランスの乱れが、自律神経の中枢がある視床下部にも影響し、
- 体温調節
- 心拍・血圧
- 睡眠リズム
- 気分の安定
などが不安定になりやすくなります。
3. 更年期によくみられる症状
更年期に現れる症状は、とても幅が広く、人によって組み合わせも強さも異なります。
ここでは代表的なものを整理してみます。
3-1. からだの症状(身体症状)
- ほてり・のぼせ(ホットフラッシュ)
顔や上半身が急にカーッと熱くなる、赤くなる、汗が噴き出すなど。 - 発汗(寝汗を含む)
夜中に汗をかいて目が覚める、急に汗が出て着替えが必要になるなど。 - 動悸・息切れ
階段をのぼるなど軽い動作でもドキドキしやすく感じることがあります。 - 肩こり・首こり・頭痛
今まで以上にこりや痛みを感じやすくなる方もいます。 - 冷え・のぼせの両方
手足は冷たいのに、顔だけほてるなど「冷えのぼせ」の状態になることもあります。 - めまい・ふらつき
立ち上がるとふわっとする、船に乗っているような感覚が続くことも。 - 関節痛・筋肉痛
手指の関節や膝、腰が痛みやすくなるケースもあります。
3-2. 心の症状(精神症状)
ホルモンの変動は、感情や思考にも影響を与えます。
- イライラしやすい
- 気分が落ち込みやすい
- 理由もなく不安になる
- やる気が出ない・興味がわかない
- よく眠れない(寝つきが悪い/途中で目が覚める)
など、「性格が変わったみたい」と感じる方もいます。
責める必要はなく、ホルモン+環境の変化(子どもの独立、親の介護、仕事の変化など)が重なりやすい時期という背景も大きいです。
3-3. デリケートゾーンや泌尿器の症状
エストロゲンが減ることで、
- 膣や外陰部の粘膜がうすく・乾燥しやすくなる
- 尿道まわりの粘膜も弱くなる
といった変化が起こり、
- 膣の乾燥感・かゆみ・ヒリヒリ感
- 性交痛(セックスのときの痛み)
- 尿もれ(腹圧性尿失禁)
- 頻尿・残尿感
- 膀胱炎を繰り返しやすい
などの症状にもつながりやすくなります。
3-4. 長い目でみた影響(骨や血管への影響)
エストロゲンには、
- 骨を守る
- 血管の柔軟性を保つ
といった働きもあります。
そのため、閉経後の長い期間で見ると、
- 骨粗しょう症
- 動脈硬化(心筋梗塞・脳梗塞のリスク上昇)
などのリスクが高まりやすくなることがわかっています。
更年期以降の**「骨・血管ケア」も、これからの健康寿命のカギ**になります。
4. 「更年期障害」とは?どこからが病院レベル?
似た言葉に、「更年期」と「更年期障害」があります。
- 更年期
→ 閉経前後のホルモン変化が起こる“時期”そのもの。 - 更年期障害
→ 更年期に出やすい症状が強く、日常生活に支障が出ている状態を指します。
4-1. こんなときは受診のサイン
次のような場合は、「年齢のせいだから」と我慢せず、婦人科などに相談してみることをおすすめします。
- 仕事や家事がこなせないほど、心身の不調がつらい
- 睡眠不足が続き、日中まともに動けない
- 気分の落ち込みが強く、「何もしたくない」「消えてしまいたい」と感じることがある
- 動悸や胸の痛みが「本当に心臓の病気では?」と心配になる
- 尿もれや膣の乾燥などがつらく、生活の質が落ちていると感じる
更年期によくある症状と、別の病気による症状が重なっていることもあります。
自己判断せず、一度専門家に評価してもらうことが安心につながります。
5. 更年期を少しラクにするための基本的な考え方
ここでは、健康法というより、「こんな視点を持っておくとラクになる」という考え方をお伝えします。
5-1. 「自分だけじゃない」と知る
更年期の不調は、人に話しづらかったり、「甘えだと思われるのでは」と不安になることもあります。
しかし、多くの女性が何らかの形で経験している変化です。
- パートナー
- 家族
- 友人
- 医療者や専門家
などに、「今こんなことで困っている」と言葉にしてみることも、つらさを軽くする一歩になります。
5-2. 「我慢」より「調整」
更年期は、からだの仕様そのものが変わっていく時期です。
- 睡眠時間を少し見直してみる
- 残業や無理な予定を、できる範囲で調整する
- からだを冷やしすぎない・温めすぎない工夫をする
- 食事や運動を「完璧に」ではなく「今できる範囲で」整える
など、今の自分に合わせて生活を“微調整”していくことが大切です。
5-3. 医療やフェムケアの力も借りていい
更年期のつらい症状には、
- ホルモン補充療法(HRT)
- 漢方薬
- 睡眠・不安に対する薬
- デリケートゾーン用保湿剤・オイル・ジェル
- 骨や筋肉を守る運動やサプリメント
など、さまざまな選択肢があります。
「薬に頼るのはよくない」「自分でなんとかすべき」と考えすぎず、
“自分らしく”過ごすために、使えるサポートは上手に使う
というスタンスでいてよい時代です。
6. まとめ:知ることは、自分を守る第一歩
- 更年期は、閉経の前後約10年間にあたる、卵巣機能が変化する時期。
- 主な変化の背景には、エストロゲンをはじめとした女性ホルモンの乱高下と低下があります。
- 症状は、ほてり・のぼせ・発汗、イライラや落ち込み、膣の乾燥や尿もれ、骨・血管への影響など、多岐にわたります。
- 日常生活がつらくなるほどの不調は、「年齢のせい」と我慢せず、婦人科などで相談してよいサインです。
- ライフステージのひとつとして、更年期と付き合いながら、生活習慣・環境・医療・フェムケアを組み合わせていくことで、「自分らしい更年期」の形をつくっていけます。
「更年期=つらいだけの時期」ではなく、
これからの人生をどう過ごしていくかを考え直すチャンスでもあります。
この記事が、ご自身のからだと向き合うときの小さなヒントになればうれしいです。
