妊活中の心のケアとパートナーとのコミュニケーション
妊活は「うまくいけば数ヶ月で終わること」ではなく、先の見えない長いマラソンになることもあります。
タイミングをはかったり、通院したり、SNSや周りの妊娠報告に気持ちが揺れたり……。
からだだけでなく「心」も大きなエネルギーを使うのが妊活です。
この記事では、妊活中の心のケアのヒントと、パートナーとのコミュニケーションのポイントをまとめました。
今の自分を少しやさしくいたわりながら読んでみてください。
妊活で心が疲れやすいのは、あなただけではありません
妊活が「特別にしんどい」理由
妊活が心に負担をかけやすいのには、いくつかの理由があります。
- 結果がコントロールできない
- 毎月「期待」と「落ち込み」が繰り返される
- 生理やタイミングなど、日々「妊活基準」で生活が回る
- 周りからの何気ない一言に傷つきやすくなる
- お金や仕事との両立など、現実的な不安も重なる
これらが積み重なると、心がいつも張りつめた状態になり、「以前の自分らしさ」を見失ってしまうことがあります。
こんな気持ち、ありませんか?
- 生理が来るたびに、自分を責めてしまう
- 妊婦さんやベビー用品を見ると、ざわざわした気持ちになる
- パートナーの「大丈夫だよ」という言葉に、かえって距離を感じる
- 友だちの妊娠報告が素直に喜べず、自己嫌悪になる
- 妊活のことを考えない時間がほとんどない
どれか一つでも当てはまるなら、「自分が弱いから」ではなく、妊活がそれだけ大きな負荷をかけているのだ、と認識してあげることが第一歩です。
妊活中の心のケア:自分にできること
1. 「妊活のことを考えない時間」を意識的につくる
妊活をがんばっていると、スマホで情報を調べ続けたり、SNSで他の人の体験談を読み漁ったりしがちです。
しかし、常に妊活のことを考えている状態は、心の休み場がない状態でもあります。
意識して「妊活オフ」の時間をつくりましょう。
- 寝る前1時間は妊活の検索をやめる
- 週に1日は「妊活の話題をしない日」にする
- 趣味や好きなドラマ、読書にあてる時間をあえて予定に入れる
「妊活を忘れる時間」を持つことは、決してサボりではなく、長く続けるための大切な充電です。
2. 気持ちを言葉にして「紙」に出してみる
心の中で同じ悩みがぐるぐるしていると、不安やモヤモヤは膨らみ続けます。
そんなときは、頭の中だけで抱えず、紙やノートに書き出してみましょう。
- 今、不安に思っていること
- 悲しかった出来事
- 逆に「ありがたい」と感じること
- 今日、自分をほめてあげたいこと
書き出すことで、「自分はこんな状況の中で、よくやっている」と客観的に見つめ直すきっかけになります。
3. 「がんばりすぎている自分」に気づく
妊活中は、つい自分に厳しくなりがちです。
- 食事も睡眠も「妊活のために完璧にしないと」
- 少しでもできないと「これじゃ妊娠できない」と自分を責める
でも、妊娠は生活習慣だけで説明できるものではありません。
できる範囲で整えつつ、できない日があっても「それでも私はよくやっている」と自分に声をかけてあげてください。
4. 専門家のサポートを活用する選択肢も
心のつらさが続くときは、カウンセリングや医療機関を頼ることも選択肢のひとつです。
- 不妊治療クリニックに併設されたカウンセリング
- 心療内科・精神科・メンタルクリニック
- 自治体やNPOが実施している相談窓口
「このくらいで相談していいのかな」と迷う段階で相談しても良いのです。
早めに誰かと気持ちを分かち合うことで、心がすり減りきる前にブレーキをかけることができます。
パートナーとのコミュニケーションで大切にしたいこと
「同じ方向を向いているか」を、ときどき確認する
妊活のしんどさは、からだの負担が大きい側に偏りやすく、「どうして私ばかり」という気持ちが生まれやすくなります。
そんな中で大切なのは、「二人で同じ方向を向いている」という感覚です。
そのために、定期的にこんなことを話し合ってみましょう。
- 今の治療や妊活のペースについてどう感じているか
- どこまでの治療を考えているか(タイミング法まで、体外受精も視野に入れるのか など)
- お金や仕事とのバランスをどうとっていくか
- 妊活がつらくなったとき、どう支え合いたいか
「今の気持ち」を共有しておくことで、後になって「そんなつもりじゃなかった」というすれ違いを減らすことができます。
感情と事実を分けて伝える
妊活中は感情が揺れ動きやすく、つい相手を責めるような言い方になってしまうこともあります。
そんなときは、
- 事実
- 自分の感情
を分けて伝えることを意識してみましょう。
例)
「なんで検査の結果に興味を持ってくれないの?」
ではなく、
「今日の検査、私にとってとても緊張することだったから、帰ってきたら少し話を聞いてほしかったな。
心細い気持ちになってしまっている。」
というように、「あなたが悪い」ではなく「私はこう感じている」と伝えることがポイントです。
妊活中に役立つ、具体的な「伝え方」のヒント
1. してほしいことを、具体的に伝える
「もっと協力してほしい」だと、相手は何をすればいいかわからないことが多いです。
してほしいことを、できるだけ具体的に言葉にしてみましょう。
- 「通院の日は、一緒に来てくれると心強い」
- 「生理が来た日は、話を聞いてくれるだけでうれしい」
- 「妊活の情報を調べるのを、少し手伝ってほしい」
ポイントは、「してくれないと困る」ではなく、「してもらえると助かる・うれしい」というトーンで伝えることです。
2. 「妊活の話をする日・しない日」を決める
いつも妊活の話ばかりだと、パートナー側も疲れを感じたり、「家の中が妊活一色で苦しい」と感じることがあります。
そこで、例えば次のようなルールを設けるのも一案です。
- 平日の夜は妊活の話は短時間だけにして、週末にまとめて話す
- 月に1日は「妊活の話は禁止デー」を作る
- 「今から10分だけ妊活の話をしてもいい?」と前置きしてから話す
区切りをつけることで、お互いの心の余裕を守ることができます。
3. うまく言えないときは「手紙」や「メッセージ」に頼る
面と向かって伝えようとすると、涙が出そうになったり、言い過ぎてしまうこともあります。
どうしても言葉にしづらいときは、手紙やメッセージに書いて伝える方法もあります。
- ありがとうを伝えたいとき
- つらさを理解してほしいとき
- 今後の治療方針について、ゆっくり考えてほしいとき
書くことで、自分の気持ちも整理され、パートナーも落ち着いて読み返すことができます。
パートナー側ができるサポートについて
妊活の中心になりやすいのは、どうしても妊娠・出産をする側です。
一方で、パートナー側にも「どう支えたらよいかわからない」「何を言っても怒らせてしまいそうでこわい」と戸惑いがあることが少なくありません。
パートナー側ができるサポートの一例を紹介します。
- 「つらいよね」と気持ちを否定せず受け止める
- 解決策をすぐ提示するのではなく、まずは話を最後まで聞く
- 通院や検査の内容を一緒に理解しようとする姿勢をみせる
- 妊活のスケジュールを一緒に把握し、スケジュール管理を手伝う
- 妊活以外の時間も一緒に楽しめるような提案をする
「何もできない」と感じるかもしれませんが、「一緒に考えてくれる存在」でいること自体が、大きな支えになります。
二人の関係を「妊活だけ」にしないために
妊活を続けていると、夫婦・カップルの会話や生活の中心が「妊娠できるかどうか」になってしまうことがあります。
でも、妊活の結果にかかわらず、二人の人生はもっと広く、長く続いていきます。
- 妊活と関係ない「共通の楽しみ」を育てる
- 記念日や誕生日には、妊活とは別にお祝いをする
- 将来の夢や、やってみたいことを話し合う時間をつくる
妊活はあくまで、二人の人生の「一部」です。
ここでの経験が、のちの関係性を深めるきっかけになることもたくさんあります。
つらいときこそ、自分へのまなざしをやさしく
妊活中、私たちはつい「結果」によって自分を評価してしまいがちです。
しかし、本当に大切なのは
「結果がどうであれ、今の自分ができることを、できる範囲で続けている」
その事実です。
- 生理が来ても、あなたの価値は一切変わりません
- 泣いてしまう日があっても、それは弱さではなく、頑張っている証です
- 立ち止まったり、休んだり、やめることを選ぶのも「自分の人生を守る」立派な選択です
妊活の道のりは、一人で抱えるには大きすぎることも多いもの。
パートナーや友人、家族、医療者、カウンセラーなど、頼れる相手を上手に巻き込みながら、心の負担を少しずつ分け合っていきましょう。
あなたと、あなたのパートナーが、自分たちらしいペースで歩んでいけますように。
