カンジダ膣炎など、よくあるトラブルの基礎知識
下着の中のムズムズしたかゆみや、おりものの変化。
「病院に行くほどかな?」「でもなんとなく不安…」と感じることはありませんか。
その中でも、女性が経験しやすいトラブルの代表がカンジダ膣炎です。
ここでは、カンジダ膣炎を中心に、「よくあるトラブル」の基礎知識をやさしく整理していきます。
カンジダ膣炎ってどんな病気?
「カンジダ」はカビの一種(真菌)で、多くの人の口の中や腸、膣の中にふだんから存在している常在菌です。
ふだんは悪さをせず、他の菌たちとのバランスがとれている状態ですが、
- 体調を崩したとき
- 抵抗力が落ちたとき
- 膣内環境が乱れたとき
などに、カンジダが増えすぎて炎症を起こしてしまうのが「カンジダ膣炎」です。
ポイントは、
- 性感染症のように「特定の相手からうつされる病気」とは限らない
- 自分の体の中にもともといたカンジダが増えすぎて起きることも多い
という点です。
カンジダ膣炎の主な症状
カンジダ膣炎では、次のような症状がよくみられます。
- 外陰部〜膣の入り口まわりの強いかゆみ
- おりものが白くポロポロ・ボソボソした形になる(カッテージチーズ状と表現されることも)
- 外陰部の赤み・腫れ
- ヒリヒリ・ピリピリした痛み
- 排尿時のしみる感じ
- 性交時の痛み
ただし、症状の出方には個人差があり、
- かゆみが強い方
- かゆみよりもヒリヒリが気になる方
- 「おりものの変化」が一番気になる方
など、人によって感じ方はさまざまです。
なぜカンジダ膣炎が起こりやすくなるの?
カンジダ膣炎には、「なりやすい時期」や「きっかけ」があります。
ホルモンバランスの変化
- 妊娠中
- 低用量ピルの使用中
- 月経前(黄体期)
など、女性ホルモンの変化により膣内の環境が変わると、カンジダが増えやすくなります。
抵抗力の低下
- 風邪や体調不良のあと
- 強いストレスが続いている
- 睡眠不足・疲労がたまっている
- 糖尿病がある場合 など
体の「守る力」が弱ると、膣内でも菌のバランスが崩れやすくなります。
お薬の影響(抗生物質など)
- 抗生物質(風邪や尿路感染症などで処方される薬)の内服
抗生物質は「悪い菌」だけでなく、膣内でカンジダとバランスを取っている「ほかの菌」も減らしてしまうことがあります。
その結果、カンジダだけが増えやすくなってしまうことがあります。
生活習慣・環境
- 通気性の悪い下着やストッキング
- タイトなスキニーパンツ・ガードルなどの締めつけ
- 汗をかいたあとや、プール・温泉のあとに下着や水着を長時間替えない
- デリケートゾーンをゴシゴシ洗いすぎる、強いボディソープを使う
こうした要因で外陰部〜膣のまわりがムレる・こすれる・乾燥すると、トラブルのきっかけになりやすくなります。
「カンジダかも?」と思ったときの目安
あくまで目安ですが、次のようなときはカンジダ膣炎の可能性があります。
- 強いかゆみがある
- おりものが白くボソボソ・ポロポロしている
- 外陰部が赤く、ヒリヒリ痛い
- 生理前に症状が出やすく、出たりおさまったりをくり返す
ただし、症状だけでカンジダ膣炎と言い切ることはできません。
- 細菌性膣炎
- トリコモナス膣炎
- 性感染症(クラミジア・淋菌など)
- 接触皮膚炎(ナプキン・石けん・洗剤などが原因)
など、別の病気でも似たような症状が出ることがあります。
自己チェックはあくまで「目安」としてとらえ、気になるときは婦人科・産婦人科での診察がおすすめです。
市販薬を使う前に知っておきたいこと
ドラッグストアなどでは、カンジダ膣炎用の市販薬も販売されています。
一見「これで解決しそう」に感じますが、自己判断で市販薬を使う前に注意したい点があります。
こんなときは受診を優先
次のような場合は、最初から医療機関での受診がおすすめです。
- はじめてこのような症状が出た
- 市販薬を使ってもよくならない、すぐ再発する
- 発熱・下腹部痛がある
- おりもののにおいが強くなった(生臭い・腐敗臭など)
- 妊娠中
- 糖尿病や免疫に関わる持病がある
- 半年の間に何度も同じような症状をくり返している
きちんとした診断を受けずに市販薬だけで対処してしまうと、
- 本当は別の病気なのに見逃してしまう
- 治療が中途半端になり、くり返す原因になる
といったリスクがあります。
「カンジダかどうか分からない」「何度もくり返してつらい」という場合こそ、婦人科受診を前向きに検討してみてください。
再発をくり返すカンジダ膣炎
カンジダ膣炎は一度治っても再発しやすいのが特徴です。
- 1年に何度もくり返す
- 生理前になると必ずかゆくなる
といった方も珍しくありません。
再発をくり返す場合には、
- 体質やホルモンバランス
- 生活習慣
- 糖尿病などの基礎疾患
が影響していることもあります。
この場合、治療方法も長めの治療や維持療法など、通常とは変わる場合があります。
くり返すときこそ、自己判断で市販薬を続けるのではなく、医師とよく相談しながら治療を進めていくことが大切です。
カンジダ膣炎とまぎらわしい「よくあるトラブル」
デリケートゾーンの不快感は、カンジダ膣炎以外でも起こります。
細菌性膣症・細菌性膣炎
- サラサラ〜水っぽいおりもの
- 灰白色〜やや黄みがかった色
- 生魚のようなにおいが気になる
膣内の常在菌のバランスが崩れ、細菌が増えた状態です。
性感染症(クラミジア・淋菌など)
- 黄色〜黄緑色がかったおりもの
- 下腹部痛
- 排尿時の痛み
などが出ることもありますが、「ほとんど症状がない」場合もあり、検査をしないと分からないこともあります。
トリコモナス膣炎
- 泡立ったような黄緑色のおりもの
- 強いにおい
- かゆみ・灼熱感
などが特徴的と言われています。
接触皮膚炎(かぶれ)
- ナプキン・おりものシート
- 石けん・ボディーソープ
- 洗剤・柔軟剤
- ショーツの素材・縫い目
などが刺激となって、かゆみや赤みが出ることもあります。
「新しい製品を使い始めてから症状が出てきた」という場合は、かぶれも疑われます。
どのトラブルも、症状だけでは見分けがつきにくいため、自己判断よりも専門家による診察が安心です。
日常生活でできる予防・セルフケア
カンジダ膣炎や「よくあるトラブル」を少しでも防ぐために、日常で意識できるポイントをまとめます。
1. 下着・衣類の見直し
- 通気性のよい綿素材のショーツを選ぶ
- タイトすぎるジーンズ・ガードルは長時間続けない
- 汗をかいたら、できるだけ早めに下着を替える
- 水着や濡れた下着を長時間身につけたままにしない
2. 洗いすぎない・こすりすぎない
- デリケートゾーンはゴシゴシこすらず、なでるようにやさしく洗う
- 熱いお湯ではなく、ぬるま湯で洗う
- 強いボディソープではなく、デリケートゾーン専用ソープや低刺激のものを使用する
- 膣の中を洗浄する「膣内洗浄」は、自己判断では行わない(常在菌バランスを崩す原因になることがあります)
3. 体調管理・生活リズム
- 睡眠・休養をしっかりとる
- ストレスをため込みすぎない工夫をする
- バランスのよい食事を心がける
- 糖尿病などの持病がある場合は、主治医と相談しながらコントロールを整える
こんなときは早めに婦人科へ
次のような場合は、自己ケアだけに頼らず、婦人科・産婦人科の受診を検討してください。
- はじめて「かゆみ・おりものの変化」が出た
- 自分ではカンジダかなと思うが、はっきり診断されたことがない
- 市販薬を使用してもよくならない/すぐ再発する
- 症状が強く、夜も眠れないほどつらい
- おりものの色やにおいがいつもと明らかに違う
- 下腹部痛・発熱など、全身の症状もある
- 妊娠中・妊娠の可能性がある
- 糖尿病や免疫に関わる病気がある
「こんなことで受診していいのかな…」と思ってしまいがちですが、
デリケートゾーンの不快感は、早めに相談した方が楽になるトラブルです。
心配なときは、一人で抱え込まず、医療機関に相談してみてください。
まとめ:よくあるトラブルだからこそ、正しい知識を
- カンジダ膣炎は「カンジダ」というカビが増えすぎて起こる、よくある膣の炎症
- かゆみや白いポロポロしたおりものなどが典型的な症状
- ホルモンバランスの変化、体調不良、抗生物質、ムレやこすれなどがきっかけになりやすい
- 似た症状を起こす別の病気も多く、自己判断だけでの市販薬使用には注意が必要
- 下着や洗い方、生活習慣の見直しで、トラブルを減らせる可能性がある
- 不安なとき、くり返すとき、症状が強いときは、婦人科受診をためらわないことが大切
デリケートゾーンの悩みは、人には話しづらく、つい我慢してしまいがちです。
「よくあること」だからこそ、正しい知識と、頼れる相談先を持っておくことが、自分のからだを守る第一歩になります。
